画家ゆかりの宿

画家の宿

<安井曽太郎画伯の画室>
海上ホテル江澤館は「画家の宿」である。
この歴史で安井曽太郎画伯との因縁は
特筆すべきであろう。
昭和六年の夏、江澤館に滞在した安井画伯は、
作風が調子づいた四十三歳であった。
四階の一室からの眺望を好み人も近づけずにこもり、
眼下の海景を写生した。
安井画伯の風景画では代表作の「外房風景」は、
横長の白を多用した色調の大作である。
夏の陽光をうけた水上と生活が幅広く描かれており、
海風さえ感じさせる力作である。
昭和六年九月、第十八回二科展に出品された。

千葉県立美術館 元館長 高橋在久

江澤館

『画家ゆかりの宿 江澤館』
波太海岸で作品を描いていた石川寅治と
中川八郎を泊めたという民家が、当時
造船所を経営していた江澤館です。
二人の画家との出会いがきっかけで
旅館業に転じ、その後、多くの画家が
訪れました。
波太海岸を描いた作品『外房風景』で
有名な安井曾太郎先生が逗留した宿
として今の『画家ゆかりの宿江澤館』
があります。

安井曽太郎先生の部屋

房総半島の鴨川市太海、波太海岸は
古くから日本近代洋画家達に注目され、
多くの洋画家が訪れました。
その先駆者と言われる浅井忠が、
房総旅行の途中で波太海岸を先駆的に
スケッチしたのが、写生地としての
波太海岸の歴史の始まりです。
その後、多くの画家が訪れ、中でも
石川寅治と中川八郎が仁右衛門島のある
波太海岸の民家に泊まり、海の作品を
描き、その絵が絵画展で受賞した
ことで波太海岸は画家の注目の写生地と
なりました。

当館周辺

本館と別館の間の道は古くはメインの通りでした。今ある海沿い外周の道路は新しくできた道です。古いメイン通りを歩いてみると、昔ながらの漁村や、「外房風景」に描かれた太海の雰囲気が感じられます。また浅野忠信主演で映画化されたつげ義春の漫画作品『ねじ式』の舞台となった場所もあります。当館まわりを散策されると、その独特な雰囲気を味わえます。

仁右衛門島

(渡船料金割引有)
南房総の海に浮かぶ不思議な島。所有者である「平野仁右衛門」が一戸だけ住んでおり、この名で呼ばれています。手漕ぎ船で渡る仁右衛門島は名勝地であり、新日本百景にも選ばれました。この島には伝説や逸話、神々が宿ります。仁右衛門が頼朝を匿ったとされる「頼朝の隠れ穴」や「正一位稲荷大明神」など、歴史と景観を併せ持った観光スポットです。

魚見塚展望台

(当館から車で約5分)
鴨川の市街地より、雄大に広がる水平線を眺めることができる展望台。周囲一帯を見守るかのように設置された女神像「暁風」が特に象徴的です。また「女神像の前で恋人たちが誓いをたて、その証明として鍵を掛けていく」という願掛けがあります。この願掛けにちなんだ「誓いの場」では、多くのカップルによる錠が掛けられています。アニメ作品にも登場しており、主人公とヒロインが、鴨川の町並みを眺めながら誓いを立てたシーンもあります。

鴨川シーワールド

(当館から車で約15分)
海の生命との触れ合いをテーマとした、体験プログラムがある水族館。シャチやイルカのダイナミックなショーを通じて、海の生き物の運動性と知性を垣間見ることが出来ます。取り組みの中に「教育活動」を取り入れており、水族館としての展示だけでなく、学びの場も提供しています。中にはお子様を対象とした教育プログラムも用意されています。トレーナー体験やサマースクールなどを通じて、海の生物との向き合い方を学ぶことができます。事前予約と確認が必要です。

江澤館の現在と未来

道路拡張工事などの影響で、当時安井曾太郎先生が描いた海岸線より外側に防波堤ができ、海上ホテルとしての眺めも薄れていますが、今でも絵画に興味のあるお客様が多く訪れ、先人達が見た景色と変わらぬ海、当時の景色の面影に思いを馳せ、昔と変わらず波太の海を絵に残されています。

波太海岸の絵画の歴史が始まってから共に歩んできた江澤館。今もなお多くの画家に愛されています。また、時代の流れとともに旅行スタイルも変化しておりますが、昔ながらの客室、海沿いの海鮮料理でお客様をおもてなしいたします。今も昔も多くの人に愛される江澤館であるように従業員一同、日々努力を続けてまいります。